2004年6月アーカイブ

♪若葉の頃のお話

園長: すぎもと かずひさ (2004年6月 1日
 40歳を過ぎてのはじめての妊娠ということで、会うたびにその喜びを口にしていた知人から、哀しい知らせは届けられた。出産に備え大事をとって産科に入院した矢先の妊娠37週に、突然、胎児が天に召されたというのである。悲しみは大きく、わたしには到底うかがい知ることもできないが、「あたりまえと思えるようなことがどんなにすごいことかわかったよ」と誰告げるとなく発せられた彼のひと言はあまりにも深い。
 先日、お寺さんと兼業の保育なかまに僧の修行の中身について問うてみた。彼曰く「あたりまえのことをあたりまえにできるように修行する」とのこと。まずは便所掃除から、きれいになったと思うところで先輩僧を呼び確認をお願いする。すると「床にほおずりしてみよ」とのお達し。本当にきれいにしたというのならそれ位はできるだろうというのである。
 その意味について、自分なりに味わってみた。私たち人間は、他の生命体を食して生きる。だから、感謝の意を込めて「いただきます」をする。そして、体内で栄養を吸収し蓄え、便所で排泄するのだから本当の意味での「ごちそうさま」は便所ですることこそがふさわしいのかもしれない。加えて便所となっている床材は、かつて鳥や虫や多くの生物を養っていたに違いない。そんな思いを馳せながら木目のひとすじひとすじを感謝のうちに磨き上げるとしたら、便所はきれいになることが自然の理なのであろう。
 携帯電話の壁紙に掲げられた小さな遺影に日常の尊さをあらためて教えられる。若葉の頃。

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