2006年10月アーカイブ

♪「躾」のお話

園長: すぎもと かずひさ (2006年10月 1日
「躾」という字は日本でつくられた。この字の持つ意味と字体に感銘を受けた中国のある方が、この字をテーマに中国で書道展を開催されたと耳にしたことがある。ところが、産みの親である日本において「躾」という行為は急速に影を潜め、多くの教育的課題の要因となっている。


 「躾」と聞くと児童虐待の口実に使われたり、大人から子どもへの支配的イメージを持たれたりするかもしれないが、本来的には人生の先達である大人たちが愛する子どもたちへいのちの尊さや物のありがたみ、生活の知恵、ときには人の道を伝授するための行為であったと思う。


 朝の職員会議のことである。話題は乳児ぐみの食事の後始末。食べこぼしを掃除するとき机と床とどちらを優先すべきかというある保育士からの問いかけであった。結論は床ということになった。家庭で問題になることはないが、複数の子どもが生活する保育園では、食事ひとつとっても一人ひとりのリズムやテンポが違うので、そのことへの配慮を要すると。食事中の子どもと遊んでいる子どもが共存する部屋を子どもの視点で見たとき、遊び空間である床を広く自由に使えるよう整えることを優先すべしというのがその理由である。食べこぼしといっても不衛生なものではないし、食事中の机には自然にあるものだが、遊び環境である床にはないほうが良い、ゆえに床が先という結論に至ったのである。


 当たり前のことかもしれない些細なことである。しかし、自分なら何も考えずに行動していたのではないか、そして、床の片づけを後回しにしたために「こっちきたらあかんよ、ばっちいからね」と無用の制限を子どもにしたのではないかとも思えるのである。この小さな問いかけの動機はあきらかに子どもたちへの愛情であった。加えて、状況を冷静に観察・判断し、計画的に関わろうというのである。これも「躾」である。

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