2008年11月アーカイブ

♪「子どもの原風景の創造と再生」のおはなし

園長: すぎもと かずひさ (2008年11月 1日

 日本学術会議子どもを元気にする環境づくり戦略・政策検討委員会は「我が国の子どもを元気にする環境づくりのための国家的戦略の確立に向けて」という報告書のなかで、その提言の背景についてつぎのように語っている。

 『我が国の子どもは今、極めて危機的な状況にある。体力・運動能力の低下、肥満や糖尿病などの生活習慣病の増加、学力の低下だけでなく、意欲の低下、不登校や引きこもりの増加、いじめやそれによる自殺など、「子どもの危機」とも呼ぶべき状況は、幼児から青少年まですべての段階において見られる。また親による虐待も増加している。ユニセフの国際比較によれば、我が国の子どもは飛び抜けて「自分は孤独である」と認めており、向上心も極めて低いと報告されている。このような状況をもたらしたのは子どもの成育環境の変化である。子どもの元気を育むことは、一人ひとりの子どもの幸せのためになすべきおとなの責任であると共に、次世代を担う人材を育成するという国家的な重要課題である。』
 
 また、京都教育大学名誉教授 岡本夏木氏も著作「幼児期」のなかで、
 『今日の幼児の世界は早くからおとな社会の強大な圧力にさらされている。「幼児期」たらしめている特徴が軽視されがちになっている。幼児期においてこそ形成されるべき人間の生き方の基礎があるにもかかわらず、その獲得が不十分なまま、子どもたちはおとな社会へ投げ出されてゆく。」とし、幼児期の空洞化の問題を指摘、その再生に向けてつぎの五つの視座からの見直しを提言している。

第一 教育や保育的働き(制度を含めて)を、「子どもの側  から」常に見直すこと、児童中心主義。
      
第二 それぞれの子どもを、一人の全体としてとらえること。

第三 子どもを操作の対象としてだけ見るのではなく、ともに生活を実現している「生の共同者」として見ること。

第四 現在の文化的・社会的環境の持つ性質を、それが何を子どもに及ぼすのかという視点からとらえること。たとえば「情報社会」や「能力主義」が子どもにどんな影響を与えているのかを検証し、それらのことを深く理解しながら関わってゆく責任がおとなに求められること。

第五 学校教育の問題を幼児の生活状況との関連から長いスパンで考えること。「解釈力」や「読解力」は机上の学習で得られるのではなく、豊かな日常生活の土台があって成立すること。』

  このような現状を招き、見逃してばかりではわたしたち大人の立つ瀬はない。
「人生にとって大切なことは何か」について真に問い直し、人間福祉的観点から子どもの育ちの環境を見つめなおしたいものである。
子どもの原風景の創造と再生に向けて。

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