2012年4月アーカイブ

保育園の園庭での一場面。


 さわやかな青空とまばゆい光に誘われて数名の2歳児さんが水場で戯れている。そのうちの一人の男の子が蛇口に向かっていった。小さな手が蛇口をひねる。指の間にはティッシュが覗いている。水をしこたま含み込んだティッシュは「おそうじ、おそうじ・・・」という可愛いつぶやきを声援に雑巾に変身する。小さな手は水場のコンクリートや木の幹をつぎつぎと濡らしては、上に下に動いていく。日頃のお母さんの仕草が再現されて穏やかな生活風景が見えるようだ。


 突然、そこにある保育士がやってきた。「ゴミ箱にポイしよか」大きな手につかまれた手首の先に茶色くしぼんだティッシュが見える。笑顔の保育士は自分の言動が善意に満ちているがゆえに気づかない。「ちょっとまって!プレイバック!プレイバック!いまのことば!プレイバック!プレイバック!!(このフレーズをご存知?昭和のアイドル山口百恵さんの歌の歌詞です、はい!)」
ギターのリフもびっくり~、どこ見て歩いてんだよ~。眉毛もせりあがるっちゅうねん。すぐさま保育士をたしなめる。「こどもの行動の前後をよく見ような、このティッシュはゴミなんかじゃないで、こころもピカピカになる夢の雑巾や。」


 ティッシュはゴミであるという先入観と瞬間の判断がこどもごころを台無しにするところであった。こどもを思いやるはじめの一歩はこどもたち一人ひとりの行動を丁寧に見守ることである。こどもの何気ない行動は何気ないのではなく、ときにかけがえのない意味を持つ。

 危うく命拾いをした茶色いティッシュは喜び勇んで蛇口へ走る。ともだちのうらやましそうな視線を浴びて新たな仕事にお出かけだ。

 卒園式当日、恒例の「ありがとうの集い」では、卒園されるこどもたちや保護者のみなさんから保育者冥利に尽きる最高のひとときがプレゼントされる。昨年度も特別ゲストが招待されるなど、大いに盛り上がった。その模様は「2012年 ありがとうの会 特別ゲスト」という名でYou Tubeに公開されているので是非ご覧いただきたい。

 

 そんな素晴らしき卒園児さんとその保護者のみなさんの陽気が南風となって、職員の心を揺らしている。堤防沿いに咲く菜の花のように保育園中があたり一面の笑顔である。笑顔の根っこは力強い。いつの間にか周りに伸びて握手するように広がっていく。根っこの先にはさまざまなものが居て、いくつもの出会いを与えてくれる。その一つひとつが栄養となり、つながり合い、自然なたくましさが生まれ、新たな花が咲く。

 

  新入園・進級のおともだちおめでとう。こどもたちの尊く、かけがえのない息遣いの一つひとつに気を合わせられること、ヨチヨチ・ハイハイの一歩一歩に歩みを重ねられることが本当にうれしい。人間関係が真ん中の保育のこころは、柔らかく影響を受けやすいこどもたちとその日常をいかに良質なコミュニケーションで彩るかにかかっている。良質なコミュニケーションが良質な保育を創造する。やさしく温め合いつつ、ときには切磋琢磨し合う人間同士の関係性の発達を通じて、善き人間が育まれる。誰もが善い人間を志す「向善説」の生き方がある。

 

 こどももおとなもいっしょになって、みんなが「うれしいこと」「楽しいこと」「おもしろいこと」「美しいこと」「善いこと」を考え、実行し、それらのプロセスそのものを生きがいに代えていく。経済不況、環境の悪化、少子化、人間関係の希薄化等々、課題山積の時代に灯をともす。良質なコミュニケーションから希望の未来を見せる。「こんなしあわせがほかにある?」「その気になったらいつでもつくれるやんなぁ!」こどもらの楽しげな声がする。みんな!気を合わせて陽気に行こう!!

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