2012年5月アーカイブ

24年6月 「あそびのパワー」のお話   すぎもと かずひさ

園長: すぎもと かずひさ (2012年5月31日

  職員室の扉や職員トイレのドアにあどけない数枚の手紙が貼られてある。

「どろだんごを ぴかぴかにみがく つるつるのぬのを もってきてください」
文字のたどたどしさとは裏腹に、青や橙、赤、緑など4、5色のクレパスを駆使して書かれてあり、思いのたけが見えるようだ。


 先日、5歳児ゆりぐみさんのこどもたちがしずしずと職員室にやってきて恐る恐るドアをノックした。窓越しにその様子が見える。その時職員室にいた保育士に「これを貼ってください!」「お願いします!」と頼んだそうな。


   いくつもの無邪気な口に頼まれては断れない。こうして「もっとぴかぴかのどろだんごをつくりたい」という自分たちの願いを叶える希望の手紙が保育園のそこかしこに貼られたわけである。


 2歳児さんもお兄ちゃんお姉ちゃんたちの影響を受けて、今にもこわれそうな自分のどろだんごをビニール袋に入れて一日中どこへ行くにも持っている。


 3歳以上児さんは保育士が憧れモデルとなってさりげなく繰り返す小さな自慢に刺激を受けて、保育士が持っている牛乳パック製の自分専用のどろだんご入れや装飾がうらやましくてしょうがない。「ぼくも、わたしもつくりたい~」とおねだりの輪がひろがっていく。
 

 リサイクル素材として用意された広告紙がみる間になくなっていく。リサイクル素材たちも喜ぶ金箔以上のはたらきだ。目印は次第に飾りとなって手をかけた分だけの愛着が入れ物いっぱいにあふれだし、ままごとのおうちや宝物の置き場所等、その周辺に広がっていく。 さらに、「自分のどろだんごを守りたい」というこどもたちの欲求に応えて、保育士が準備したフリース等の柔らかな布を入れ物の中に貼る。貼られた布がクッションになって大切などろだんごを守ってくれるという寸法だ。


 当初の5歳児さんのあそびは、その年齢にとどまることなく保育園中に広がり、さらに発展していくのである。


 言語がままならないこどもたちの行動を介した対話的なやり取りには、おとなの想像を超えるパワーがある。


 ひとりの満足から豊かな行動コミュニケーションが生まれ楽しげな雰囲気をつくる。あそびのパワーである。

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