2017年7月アーカイブ

『 保育の帆 』のお話

園長: すぎもと かずひさ (2017年7月31日

『 保育の帆 』のお話

 

理事長 すぎもと かずひさ

 

7月に入り、子どもたちの「おめでとう」の連呼が追いかけてくる。「誕生日おめでとうボード」を見たのだ。該当月の子どもたちは自分の写真をいじったりニヤニヤしたりうれしそうである。また、他の子どもたちも写真の中から親しい友達を見つけてはそこから会話を弾ませるなど、まさに人気の場所が人気者をつくる仕掛けにもなっている。

誕生会では該当月の子どもたちに三室戸・Hana花では「たかいたかい」、黄檗では「年の数のおみこしわっしょい」をプレゼントする。ところでいつの頃からか、私もプレゼントしてもらえるようになった。重い。二人がかりである。見ると卒園児のスタッフもいる。園児の時に持ち上げた彼らに担がれるのだ。さすが若人、ほどなく宙へ。「わぁーっ」とどよめく子どもたち。驚きと羨望が入り混じるがすぐに純粋な気持ちから拍手を送ってくれることが分かる。心から嬉しい。仕事のモチベーションが高まらずにはいられない。

 15年を振り返ると共に未来を展望する。駅前保育所の設置では里山の自然の遊び場・古民家をセットアップした。分園の設置では高齢化社会を見据えて多世代が活用できる空間・拠点をイメージした。第二園庭の畑つくりでは野菜の栽培に加えて藍畑から藍染め活動をカリキュラムに盛り込んだ。さらに、去る6月には黄檗園の隣地を取得。「森の遊び場」の風情であり乳幼児期から学童・少年期を展望した保育の拠点として整備を進めているところである。

 乳幼児期の教育・保育の方法の原則である「環境を通して行う保育」を広義に解せば「子どもと地域、子どもと自然を結ぶ活動場所の充実」であろう。「能動的学び手」としての本領が最大限に発揮できうる環境、生きる力の土台を育む経験を積み、新たな自己と出会ってゆくにふさわしい環境を用意してゆきたいと思う。

ヨットを始めた。「マザーレイク琵琶」である。卒園遠足でお世話になるようになってからいつかは「水と風の遊び場」として関わりを持ちたいと計画していた。無論取り入れ方はリスクを最大限に考慮して、対象者や環境を吟味する必要がある。ヨットでは、安全・マナーのこと、整理整頓のこと、段取り・手際のことを最初に学ぶ。何よりも自然から学ぶことは大きい。 「環境を通して行う保育」は自然との関わりが本道であろう。追い風、向かい風、無風の時もあれば嵐もある。機械の及ばない自然の中で、生きる力と喜びにはためく保育の帆である。

『 噴水の夏 』のお話

園長: すぎもと かずひさ (2017年7月 1日

『 噴水の夏 』のお話


 理事長 すぎもと かずひさ

 

子どもは手洗い場が大好きである。水栓はもちろん手動。作動したりしなかったり気まぐれな自動センサーは、ときに子どもの意思とちぐはぐな作動によって子どもの直観的活動に水を差す。

「水を出したい⇒水栓をひねる⇒水が出る」という自らの意思と行為と現象と、ひんやり心地いい水の感触とそれらの一つ一つを感受する感覚が相まって総合的な「快」の体験として取り込まれてゆくからたまらない。センサーが勝手に反応して、あるいは、反応する位置を確かめ、微妙なタイムラグを窺いながら「水が出てしまう」体験との違いは明々白々である。

乳児室では、0歳さんから2歳さんまで年齢の別なく子どもたちは蛇口が気になってしょうがない。その独特のフォルムもさることながら、保育者がバケツに汲んだりタオルを洗ったりする様子をそばにいて毎日見せられるのだから、好奇心はくすぐられっ放し、募る欲求は抑えられるはずもない。そんなことなので、気づけば水浸しということが度々である。

ある日のこと、いつものように保育環境の様子を見ようと園舎をめぐっていると、紐でがんじがらめになった水栓に出くわした。「他のクラスもかしら・・・」、と慌てて見回ってみるとそうでもない。また、年齢差の高低によるものでもないのであった。つまり、「子どもの水いたずら」に対する保育者の耐性、あるいは子ども理解の深度による関わりの違いがその後の対応の分岐点となって保育環境に現れたのであった。

子どもはやってみてものごとを理解してゆく。「いたずらや散らかりなどの混沌とした状況をも受け容れてゆく先に真の子ども理解の途がある」ことを知る保育者は、「水浸し」を笑顔で受け容れる。俄然、子どもはのびのびとなる。自己を発揮し、体験の幅を広げ、学びのチャンスをどんどん増やしてゆく。さらに、ルールや約束など大人から求められる社会性が絞られているので「問題行動」や「気になる行動」が出現しにくい。

3歳の男の子。じっと蛇口を眺めている。膨らんでは垂れそうになる滴の様子が面白いのだ。「さわっちゃうよ。ああ、ひねっちゃうよ。」今日も先っちょに垂れる滴が素敵過ぎ。まさに佳境である。ところが、突然、遠慮のない指がやってきた。滴をつぶす。

「うわぁ~!!」無念の叫びが聞こえてくる。呆気にとられた彼。喪失感を取り返すかのように蛇口をひねった。衝動が水勢になる。蛇口と無遠慮な友の指の間から噴水の夏。

 

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