2018年4月アーカイブ

「養護と教育の一体的展開・2歳児の靴の巻」のお話

園長: すぎもと かずひさ (2018年4月27日

「養護と教育の一体的展開・2歳児の靴の巻」のお話

  理事長 すぎもと かずひさ

 

2歳児クラスの女の子が地面にへたり込んでいる。左のつま先を申し訳程度、靴に入れて動かない。この年齢、発達過程の子どもにとって「自分で靴を履く」に必要な技量とその未熟さゆえの労力は相当である。さらには、足の甲を挿入するほどに引きずられるようにベロが中へ折れ曲がったり、足の裏に付着した砂や小石が底や側面で忍者のまきびしのようにごろごろしたりなど、不快感が意欲を削ぐこともしばしばである。彼女にしてもすでにそのような事情で出ばなをくじかれているのかもしれない。「自分で靴を履き切る」という憧れの未来像へ到達するにはこのような葛藤をいくつも乗り越えなければならない。

「達成感を子どもへ」。揺れる思いで固まっている彼女へ思いやりをかける。眼の前でやおら靴を履き始める私。「う、うん、む、難しいなぁ」、足の挿入がままならない私の様子に彼女の視線が釘付けになる。「甲高、幅広で泣かされてきた経験よ、今活かされん!」とばかりに演じる。「ほう!うんしょ!」、ようやくつま先が入る。身を乗り出すように私を見つめる彼女。自らを重ねているのだ。

いよいよ仕上げ。かかとの挿入である。靴ベラ代わりの人差し指の出番だ。隙間が狭くてなかなか入らない。体重をかけると、かかとの位置が沈んで靴の後ろを踏みつけますます隙間がなくなる。何という難しさ。「ひぃひぃ」言いながら懸命に人差し指をこじる私。気が付くと彼女も可愛い人差し指を靴のかかとに入れ、第一関節が直角になるほど力を込めて引っ張り始めているではないか。

よーし、競争だ。おさなごころに火をつける。彼女より少し早くに片方を履き終え、「やったぁ!自分で履けたぁ!」と小躍りして見せる。そんな私を尻目にウサギとカメの童話さながらに、もう片方に取り掛かる彼女。さっきまでの葛藤は、砂や小石などの不快感はいずこへ。速い。私が「あっ!うん!」と苦労している間、まさに、あっ!という間に履き終えたかと思うと私のことなど眼中にないといった風情で後方のスロープへ走り去っていった。

「憧れの自分像」を獲得した喜びを元気に走る彼女。乳幼児の教育・保育のキーワードに「養護と教育の一体的展開」がある。「子どもの心持ち、情緒への配慮=養護」をしつつ、「子どものやりたい(欲求)や成りたい(願い)を実現してゆく=教育」の方法を指す。彼女の陽気な「靴が鳴る」。

『 豊かな原体験のプレゼント 』のお話

園長: すぎもと かずひさ (2018年4月 7日

『 豊かな原体験のプレゼント 』のお話 

理事長 すぎもと かずひさ

 

 感謝と祝福、大好きな言葉です。一人一人の子どもさんと保護者さんとの出会い、一期一会を大切にかみしめてゆきたいと思います。弊法人の理念は「いのちを大切にすること」。この理念に基づいて教育・保育の実践に精一杯、邁進してゆきたいと考えています。

 第一は、子どもさんの安全です。コップ一杯の水で溺死する、プチトマトやリュックサック、ヨットパーカーのひもで窒息死するなどの事故例に学び、安全の確保に努めます。また、運動遊具や布団にマット、様々な形状の玩具、鋏など、素材や道具などの環境を用意する度に、リスク要因についての検証を行い、誤飲やけがなどの事故防止に努めます。

 第二は、情緒の安定です。一人一人の子どもさんの姿や状況をありのままに受け止め、温かに、しなやかに関わりを深めてゆきます。保育の専門性は子どもと共に歩む「同行性」にあり、「子どもと保育者」または「子どもと子ども」の関係性を発達させてゆくところにあります。愛着や基本的な人間信頼を人生の土台に「人間が大好き」と感じる子どもに育つよう努めます。

 第三は、個性の尊重です。子どもは誰もが「天才」と呼ぶにふさわしい無限の可能性を持っています。また、それぞれのご家庭には大切にされている家訓や育児方針、様々な生活スタイルがあることでしょう。ゆえに、人はそれぞれに違い、違いがあるからこそ出会いは素晴らしく、それらを結集することでさらに豊かな生活や遊びが生まれてゆきます。「この園で本当に良かった」と感じる心が育まれるよう豊かな人間社会を構成し創りゆくかけがえのない「ひとり」を愛し、たたえ合い、認め合う「わたしたち」のあり方を探究します。

は、能動的な活動の保障です。子どもは、自分の興味や関心、好奇心に基づいて活動するとき、生き生きとそのいのちを輝かせ、自然に意欲を高めてゆきます。自己を発揮することにより充実してゆく子どもごころに留意し、子どもの姿や意志、願いが今日から明日へとつながるよう教育・保育の内容や環境構成の充実に努めます。

 最後に、豊かな生活へのこだわりです。衣食住のプロセスを味わい、ものの成り立ちを理解し、やがて衣服や食材・食事、住処などをつくってゆきます。自らの生活に関わり、創り、背負うライフスタイルこそはいかなる時代にあっても通用するに違いありません。人工知能との共生時代を生きる子どもたちへ「豊かな原体験のプレゼント」です。

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